さんみりぼうず

作れるものをつくってみる。ブログ

ギガショートショート(101話〜)

星新一さんの400字詰め原稿用紙20枚までで
完結する短い小説ショートショート
生涯で1001話のショートショートを生み出した
そんな星新一さんに影響を受けてさらに短い
ギガショートショートというものを作り
できれば1002話を超えたいです
文字の量が多すぎて動きがもたつくので
100話ごとに区切ることにしました

 

104、記憶質屋

いらっしゃいませ
なにかごようですか?
ちょっと5万すぐに必要で
なんとかなりますか?

わかりました
ではこの椅子に座ってください
頭につけたセンサーで
あなたの記憶を読み取ります
そのなかから5万円分の記憶を
預からせていただきます


一週間以内にお金を
返していただければ
記憶をお返しします
返せなかった場合は
他のお客様に販売します

読み込みが完了しました
あなたの記憶の中で
5万円の価値があるのは
奥様とはじめて出会い
恋をした日の記憶です

そんなの誰が買うんですか?
もう一度恋をした感覚を味わいたいという
年配の方に高く売れるんですよ

ピンポーン記憶質屋です
松村のおじいちゃん
良い恋の記憶はいりましたよ
20万円でどうでしょうか?
よし!それ売ってくれや!

あなた今日は私たちが
初めて出会った日ね
え?う、うん。
もしかして忘れちゃったの?

急に降ってきた大雨で
雨宿りしてるとあなたが来て
よかったらサンマ食べますか?
って話しかけて来たじゃない

初めて出会った日のことを
忘れるなんてひどすぎる
もうあなたとは別れます
(7/8)


103、横道蜂之介

蜂が飛んできた
追いかけて巣を見つけて
はちみつをとってやろう

蜂は2ブロック先の交差点を曲がり
途中、本屋に立ち寄り難しい哲学書を読んで
少し微笑みながら店を後にした

ようやく巣にいくと思ったら
コーヒーショップにより
店員と他愛のない会話をし
300g豆を買っていった

店をでると女が倒れていた
蜂はどうしたんですか?
と声をかけると肩を貸して
近くのポリシアへと連れていった

その後はチェスクラブにより
常連の老人と3回試合をし
賞金として50ドルを手に入れた

帰りにパブによると
カウンターにすわり
カルーアミルクをロックで頼む
しばらくすると一人で飲んでいる
隣の女に蜂は話しかけた

誰かまっているのかい?
待ち人来ずって感じよ
だったら一緒に飲まないか
一杯だけ付き合うわ

いい色のワンピースだね
ほんとにありがとう
昨日買ったばかりなの

わたしこの上のホテルに
泊まっているんだけど
もしよかったら部屋で飲まない?

うれしいけどやめとく
僕は結婚してるんだ
家で妻と子供が餌を待ってる
もうそろそろ帰るね
一杯付き合ってくれてありがとう

蜂はようやく巣に帰った
蜂の妻と蜂の子が嬉しそうに
羽をふって旦那の帰りを喜んでいる
わたしははちみつを取るのをやめ
ゆっくりと歩いて家に帰った
(6/29)

102 、ナマコの親子

まるでフードプロセッサーの中で
かき混ぜられたような波だった
わたしは45年漁師をやっているが
こんなにアバンギャルドな波は初めてだった

今日もいつもどおり
3時に起きて妻の作った
味のしない味噌汁をのんで
2までラジオ体操をして
勢いよく船に乗り込んだ

今日は絶対あいつを捕まえてやる
わたしはいつもより気合が入っていた
あいつとは5mはあるナマコだった

わたしとナマコが出会ったのは
3年前のまだ妻の味噌汁が
味のする頃だった

突然、船に大きな衝撃がきて
気がついたら私は海に落ちていた
目を開けると目の前に大きな目

私は鯨だと思い近づいて
挨拶をしようとしたら
大きなナマコだと気がつき
私は失神した

目がさめると私は
病院のベットにいた
見たことのない天井だった

それから私はナマコを
捕まえるために鍛えてきた
1筋トレ週2でヨガ
5で書道に週6ダンス

ダンダンダンダダン!
大きな音と共にナマコが現れた
私はすぐにナマコに錨を打った
引き上げて船に近づいてくると
隣に小さなナマコの子供がみえた

子供のナマコは私を見つめている
なんだか私はやりきれない気持ちになり
ナマコから錨をはずし海に返してやった
振り返ったナマコの親子は軽く会釈をして
沖の方へとゆっくりと消えていった


101、殴り合いクラブ

タカシは余韻に浸っていた
街一番の力持ちに顔面を殴られ
揺れる脳の気持ちよさに

タカシがいるこの場所は
コンビニの地下に作られた
会員制の殴り合いクラブだった


ある夜タカシは一人で
バーで酒を飲んでいると
突然男がこの場所の住所が
書かれた紙を渡してきた

はじめは薬の売人だと思い
紙はゴミ箱にいれた
しかしなぜか気になり
住所の書かれた場所にいった

入り口には今にも
死にそうな老人がいる
合言葉は?と聞かれたので
オーガニックシャンプーと答えた

するとドアが開き
地下へと案内された
そこでは大人子供男女
誰もが平等に1対1で
殴り合っていた


僕はすぐにリングにあげられた
対戦相手は知った顔だった
僕が働く店の嫌な店長だった

僕は無我夢中で店長を殴り続けた
すると誰かが僕を止めて試合は終わった

僕は家に帰りシャワーを浴び
すぐに布団に入ったが
興奮が止まらず一睡もできなかった

翌日仕事で店に行くと店長がいた
タカシおはよう今日も1日頑張ろう
お前なんかアメンボみたいな匂いがするな
店長はいつもの店長だった
(2019.6.22)